胡蝶蘭の病原菌、ウイルス対策

ウイルス(バイラス)感染や病害虫の負のスパイラルを断ち切る

ウイルス感染は他の病害虫と密接な関係があり
根絶することにより全体の品質が格段に向上します。

蘭の先進国、オランダは安全

胡蝶蘭のウイルス対策は積極的に行っている農園、花に異常なければOKと容認する農家があります。最近はリレー栽培(完成苗を購入、開花のみ)の農家が大半でウイルス対策は無に等しい。

国情で分かれ、欧州は(オランダなど)きっちりと管理されています。
逆に東南アジアはよくわからない。欧州に苗の供給関係のある会社は安全なようです。

シンビジウムモザイクウイルス(CMV)とオドントグロッサムリングスポットウィルス(ORSV)にダブル感染すると花老けを生じ、著しく品質の低下を招きます。クレーム対象となるので最近の日本への輸入株は比較的良く管理されているようです。

負のスパイラル

病気(ウイルスを含む)の進入→増殖→薬剤散布→耐性菌出現→胞子、接触等で感染拡大→他の品種で発生→温室全体が汚染→薬剤の常用。

当園が胡蝶蘭栽培に実践し、実際に成果のある方法をご紹介します。いずれもあまりお金のかかることはありませんが、痕と遂行力が必要です。

1、 栽培の流れを一方向にする。
フラスコ出し(幼苗)→小苗→中苗→大苗→開花→出荷と流れがあります。傷、生育不良などで出荷できなかった株は栽培室に戻さない。隔離栽培か廃棄処分する。(耐性菌が付着した株を戻さない)

2、 苗の受け入れ検査をする。
ウイルス検査をする。検査試薬は1回分1000円以上と高価ですがやむを得ません。

輸入または購入した株は少なくとも2ヶ月よく観察して、害虫(ゾウムシ、カイガラムシ、軟腐病)の発生に注意をする。発生した株は廃棄処分し、農薬で2回以上消毒します。

作業中、手を介して感染拡大

手製スイッチ
植え替え、移動などで病原菌手に付着してまき散らします。手洗いの水栓が汚染されていては元も子もない。少しでもリスクを減らすように全ての水栓に電磁弁を取り付け、フットスイッチで操作して手を洗います。

乾燥した作業場は普通のフットスイッチで良い、水気の多いところはリミットスイッチを用い、手製のペタルとワイヤーで連結します。安価、手軽で安全です。フラスコ出しなど無駄な水の節約に貢献

栽培用の穴トレーは蒸気で滅菌する

蒸気滅菌器

当店は、鉢を入れて栽培するプラスチック製の穴トレーは使用蒸気滅菌します。穴トレーには胡蝶蘭のウイルス、病細菌、カビの胞子、害虫の卵も付着、胞子は薬剤処理できません。

穴トレーは蒸気で加熱滅菌(90℃10分以上)。この温度は蒸気の温度でなく、披加熱物の上昇温度。90℃10分は、胡蝶蘭の有害ウイルス、病原菌をほぼ一掃する実用温度です。

測温は温度計は使えない、温度が不足と思われる場所の材料2~3カ所にサーモラベル90℃用を貼り付けます。サーモラベルは電気機械に貼り付け温度上昇を検知して変色、記憶する保全用のラベルです。電気機械、工具専門店で購入できます。

冷却後、ラベル変色を確認し、余裕をもって加熱時間を設定します。穴トレー、プラ鉢はポリプロピレン製で耐熱性があります。重ねた鉢も同様に時間設定し滅菌します。

5 栽培ベンチは定期的に塗装

塗装後のベンチ
ベンチには胡蝶蘭の根の張り付があり、ウイルスの付着、細菌類が多く付着します。

病気の発生した痕の植物残渣をバーナーで焼いてから塗装をします。異常のないベンチでも3年ぐらいでシルバー塗装をします。耐食性は飛躍的に向上、40年近く月日が経ち、比較的濃度の高い液肥を使用しておりますが錆の発生は全くありません。

当店では塗装の利便性とコストの関係で、金網やラス類は使用せず単管パイプを組み合わせております。2本のワイヤーは落下防止用で地震対策のため取り付けたものです。

支柱もクリップも除菌

薬品漕
次は胡蝶蘭の開花に使用した後の補助支柱、茎止め用クリップの等、補助材料などの除菌について説明します。

蒸気滅菌では、塩化ビニールは変形、クリップは錆びます。束ねた多量の支柱は温度が上がらないので薬品処理にします。またスチロール樹脂製の連結トレーも耐熱性が弱く加熱処理は出来ません。

通常使用されている薬剤「第三リン酸ナトリウム」を水100Lに沈殿しない程度に溶解し10日以上浸けておきます。全ての汚れも取れ、胡蝶蘭の根も溶けます。水洗するだけで中和は必要ありません、鉄材の防蝕にも有効です。

冬季気温が氷点下になると薬剤が結晶化、氷のようになってしまいます。厳寒期は保温する必要があります。

薬液槽は蓋があれば何でも良く、風呂桶を使用しております。ステンレス製の場合、地金に不純物が混じっていると電蝕で小さな穴が空くことがあり注意が必要です。

薬剤の取り替えは必要なく補充だけで経済的です。

ハサミはバーナーで焼いて消毒

栽培作業
不要な胡蝶蘭のステム(花幹)や垂れた根っこは定期的に切除します。当店は栽培トレー単位(6~10株)でハサミをバーナーで5秒程度焼いて消毒します。

バーナーの火は燃焼したまま片手で持ち、作業を続行。写真のはさみは鉄製、ステンレス製の方が耐久力がある。熱が伝わりにくいので作業性が良いが高価。

安定した火炎のカートリッジ バーナーがなかなかありません。ホームセンターの物は1年を待たず壊れてしまいます。壊れないと売れないですね。当店愛用の物は着火装置の付いていないタイプです。2000年頃ホームセンターで600円ぐらいで購入しました。6個手持ちがありますが、パッケージが残してありそれを頼りに販売元に照会しました。「韓国製であまり売れなかったので終了しました」とのことです。 真鍮製で耐久力があります。

ア○○○で手動の物が安価で売られています。黄色なので真鍮かなと思い購入した、錫で型作り。金色メッキでした。耐久力は全くなし、少し漏れる

胡蝶蘭の有機農法

こんな事を聞いたことはありませんか?
○ ハウスが古くなってきたので病気が多くなった。
○ ダニの薬が効かなくなり、高価な農薬でないと効かない。
○ 病気予防は定期的な農薬散布が必要。

これらは農薬の使い過ぎにより、農薬に弱い善玉菌が減少、悪玉菌が増殖、多く住み着いているからです。

お酒の蔵本は、環境に合った麹菌や酵母菌が住み着いております。栽培用の温室やハウスではトリコデルマ菌、放線菌、酵母菌、乳酸菌、など善玉菌が多く住み着いている。それが多ければ病原菌の繁殖を抑制するのです。

個別の情報は農分協で有能菌、使い方
効能に関する書籍が数多くありますので探してください。

これらの善玉菌を助け、栽培室に入れる材料、苗など、搬入時に徹底的に消毒します。植えたら放置

コンポストは通気性の良いものを選びます。自然に近い材料(腐葉土など)、善玉菌資材もあれば添加します。後は成り行き任せ、病気が出たら廃棄、それの繰り返し、最初は多く病気が出ますが次第に減り、ある時点でほとんど病気が消えます。

病原菌はアルカリ性に強く、酸性に弱いものが多い。木酢液等を添加して水質を弱酸性に維持するのも効果あります。

とにかく、入口が大事、悪いものを持ち込まない。これが基本です